Antonio Carlos Jobim

アントニオ・カルロス・ジョビンさん(Antonio Carlos Jobim)。

どうして、こんなに大きくて温かいんだろう、とジョビンさんのサウンドを耳にするたびにいつもため息が出てしまいます。

それは恐らく、ジョビンさんの誠実な生き方、人生の分かれ道が来た時の正しい選び方、そして家族や友人への愛が彼の音楽の中心にあるからだと思います。

未発掘音源、あるいは世界初CD化といったコピーがかまびすしい昨今の音楽業界ですが、ジョビンさんだけはやはり特別です。

モントリオール・ジャズフェスティバルでのライブ。
未発掘音源。

世界20ヶ国以上の国から2,000人以上のミュージシャンが集い、モントリオール市内のあちこちでさまざまなショーが開かれる世界最大級のジャズフェスティバルです。

ここで、ジョビンさんは当時、さまざまな世界の音楽人に出会ったはずです。

あちらこちらで自身の音楽に対する称賛の声を受け、充実したモントリオールでの滞在の様子がジャケットに映し出されたジョビンさんの横顔からも伝わってきます。

ジョビンさんの珠玉の名品が、楽しげな演奏とオーディエンスの温かい反応が、とても心地よい時間をつくりだしてくれるライヴアルバムの好盤です。

収録曲:
ワン・ノート・サンバ、おいしい水、想いあふれて、トゥー・カイツ、ウェイヴ、ボルゼギン、愛の語らい、ガブリエラ、フェリシダーヂ、ジェット機のサンバ、三月の雨、イパネマの娘

Al Taylor

極めて多元的で雑多なコンテンポラリー・アートの潮流。

もはや、「芸術」を「具象」と「抽象」といった具合に、分類化(二分化)することは無意味なことかもしれません。

それでもなお、制作の現場で具象に反発した傾向をもった作品、あるい反対に、フランシス・ベーコンさん(Francis Bacon)に代表されるように、抽象に反発しつづけた作家さんもいるわけで、「芸術」の根源には、現状に対する不満あるいは疑問といったものがあるのではないかと思います。

そのような意味で、サイ・トゥオンブリーさん(Cy Twombly)は、ゲージュツ然とした「ペインティング」を、あたかも先祖返りのごとく「ドローイング」に対してあらためて人々の眼を向けさせたという点で、大きな功績を残した作家さんといえるでしょう。

一見、落書きのような作品群ですが、近寄ってみると「ここまで!」と驚くほど緻密な描写がなされています。恐らく、通常のオフセット印刷では再現できないほどの「線」のポイエティーク。

そんなサイ・トゥオンブリーさんと同時代に生きた、もうひとりの「ドローイング」作家さんがいます。

アル・テイラーさん(Al Taylor)がそのひと。夭折の画家。

彫刻のフィールドでも作品を残した方ですが、「面」あるいは「ボリューム」で構成された立体ではなく、あくまで、「線」をエレメントとした彫刻です。

サイ・トゥオンブリーさんの作品は、ときとして挑発的でとげとげしくもありますが、アル・テイラーさんのそれは、やさしい詩のような、穏やかで瞑想的アプローチが光ります。

「ドローイング」と「彫刻」がバランスよく配置された作品集、『Drawings / Zeichnungen』がオススメ。

ちなみに、同作品集の出版社が Hatje Cantz であることも、アル・テイラーさんの作品が鉄板であることを奇しくも証明したかたちとなっています。

Leo Lionni

ちょっと かわった のねずみの はなし

うしが ぶらぶら あるいてる。うまが ぱかぱか はしってる。

そんな まきばに そって、ふるい いしがきが あった。

なやにも サイロにも ほどちかい、その いしがきの なか、

おしゃべり のねずみの いえ。

けれど おひゃくしょうさんが ひっこして しまったので、

なやは かたむき、サイロは からっぽ。そのうえ、ふゆは ちかい。

ちいさな のねずみたちは、とうもろこしと

きのみと こむぎと わらを あつめはじめた。

みんな、ひるも よるも はたらいた。

ただ フレデリックだけは べつ。

「フレデリック、どうして きみは はたらかないの?」みんなは きいた。

「こう みえたって、はたらいてるよ。」と フレデリック。

「さむくて くらい ふゆの ひの ために、

ぼくは おひさまの ひかりを あつめてるんだ。」

そして また、フレデリックが すわりこんで、まきばを じっと みつめて いると、

みんなは きいた。「こんどは なに してるんだい、フレデリック?」

フレデリックは あっさり こたえた。

「いろを あつめてるのさ。ふゆは はいいろだからね。」

また あるひ、フレデリックは、はんぶん ねむってる みたいだった。

「ゆめでも みてるのかい、フレデリック。」

みんなは すこし はらを たてて たずねた。

「ちがうよ、ぼくは ことばを あつめてるんだ。

ふゆは ながいから、はなしの たねも つきて しまうもの。」

『フレデリック』
さく レオ・レオニさん(Leo Lionni)、やく たにかわしゅんたろうさん

いい おはなし ですよ。
きょうみの あるかたは ぜひ つづきを えほんで。

P.S.
谷川俊太郎さんのはしがき。

「翻訳にあたっては、原本のもつ視覚的な美しさを損なわぬことを、まず第一に心がけました。
文章のレイアウトを、できるだけ原本どおりにするために、その内容の一部を省略せざるを得ない場合もありましたが、これは俳句的な凝縮された表現を好む日本人には、かえってふさわしいと考えています。」

言葉の世界だけではない、視覚のポエジーにも目端の利いた谷川俊太郎さんは、やっぱり超一線級です。

ACNE PAPER

いわゆるモード系雑誌とは縁遠い私ですが、これだけは別格です。

スウェーデン発『ACNE PAPER』。

ファッション誌を見ているというよりは、ポートレイトを眺めているような誌面構成は、好感度大です。

1997年にACNEのデザインチームが家族や友人の為に作成した100本のデニムがきっかけで、履き心地の良さ、抜群のシルエット、新しいモード感が瞬く間に口コミで広まり、今ではスウェーデンデニムの代表に。

というわけで、ACNEと聞くと、デニムブランドという印象が強い傾向がありますが、芯の通った雑誌を出してくるあたり、一企業体としての澄んだポリシーが伝わってきて、清々しい気分になります。

モノクロ写真を多用したタブロイド・サイズの『ACNE PAPER』。

まさに、トニック・アンド・クワイエットなオススメ・モード誌です。

Horace Silver

小林径さんによるブルーノート・ミックスをはじめ、クラブジャズ系のコンピでも取り上げられることの多いピアニスト、ホレス・シルバーさん(Horace Silver)の65年作名盤『The Cape Verdean Blues』です。

ピアノの強いバッキングも印象的なタイトル曲M-1や、うねるリズムに勇壮なホーンが冴えるハードバップM-4「NUTVILLE」あたりはいわゆる「踊れるカンジ」のナンバーです。

ジャケットの構図が、以前ご紹介したデューク・ピアソンさん(Duke Pearson)名義の金字塔『the phantom』に似ているのは気のせいでしょうか(笑)。

Peter Doig

英国生まれのペインターのピーター・ドイグさん(Peter Doig)。

過日行われた、あのサザビーズ(Sotheby’s)で「White Canoe」という作品がなんと、予想額の6倍の5,730,000ポンド(当時のレートで約13億6000万円)で落札され、リヴィング・アーティスト(現在生きている作家)の過去最高額を塗り替えてしまった、なんともたいそうな作家さんなのです。

1959年、スコットランド、エジンバラ生まれ。

94年にターナー賞にノミネートされるなど、現在イギリスを中心に高い人気を誇っている新しい世代の画家さんです。

自然と人間の関わりというトラディショナルなテーマを扱いながらも、しかし非常に幅の広い表現を得意としており、ときに18世紀の風景画家クロード・ロランさん(Claude Lorrain)を想起させるペインティングを描くかと思えば、またあるときは新聞の切り抜き写真やポストカード、映画からのワンシーンなどを引用しながらミクスチャーなスタイルを用いたりと、多彩ぶりを発揮しています。

白による「抜き」が彼らしい。

まだら、しみ、反発、ちらちらする汚れのレイヤーのオプティカルな効果が、深くて目の前の景色になる…。

うわさには聞いてましたが、実際に画集を眺めてみると、その感覚がよくわかります。

サザビーズで落札はできませんが、この画集『WORKS ON PAPER』なら手が届きます。

しかし、本物を観たいなぁ…。

13億6000万円。

Nils Dardel

D&DEPARTMENT(ケンメイさんの主宰するデザインプロジェクトの一環です)発。
このフォトフレーム、いいです。

とても気に入ってます。

小学校の机(懐かしいですね)のリサイクル。

いろんな生徒さんがこの机で勉強したんでしょう。

ところどころにキズがあったり、ひびが入っていたり。

でも、それがいいんです。

手にしたときから愛着が湧いてきます。

とてもいい買い物をさせていただきました。

ありがとう、D&DEPARTMENTさん。

今回、フォトフレームに収めさせていただいたのは、タブロイド誌ほどの大きさの雑誌『ACNE PAPER』からの切り抜き。
後期印象派のスウェーデン人画家、ニルス・ダーデルさん(Nils Dardel)のセルフポートレイトです。
時代を経ても、決して失われることのない両者の瑞々しさに、ココロも潤います。

Minnie Riperton

誰もが一度は耳にしたことがある名曲「Lovin’ You」。

過去にノーマン・コナーズさん(Norman Connors)やジュリア・フォーダムさん(Julia Fordham)などもカヴァーしていますが、日本国内で爆発的に知られるようになったのは1991年に国内のみで発表されたUKレゲエのベテラン歌手ジャネット・ケイさん(Janet Kay)の功績によるところが大きいかもしれません。

これを機に、日本のPOPシンガーもこぞってカヴァーしましたね。
平井堅さん、本田美奈子さん、アン・ルイスさん、MISIAさん等々。

前置きが長くなりましたが、この「Lovin’ You」の御家本元、正真正銘のオリジナルがミニー・リパートンさん(Minnie Riperton)なのです。

いまは天上の人となってしまいましたが、彼女のアンソロジー『Les Fleurs : The Minnie Riperton Anthorogy』は、ソロデビュー前に在籍していた「ロータリー・コネクション」(E.W&Fの元になったグループとも言われています)の時代の曲からスティーヴィー・ワンダーさん(Stevie Wonder)のプロデュースによる「Lovin’ You」(元々は、アルバム『パーフェクト・エンジェル』』に収録されているもの)まで捨て曲なし!

オリジナルならではのプリミティヴな楽曲。

フリーソウル / ヒップホップ世代には俄然おすすめの一枚です!

Gustav Mahler

たまには、いいでしょ?!

クラシックのジャケ買い。

グスタフ・マーラーさん(Gustav Mahler)、交響曲第五番。

レナード・バーンスタインさん(Leonard Bernstein)指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philharmonic)。

‘63年録音の定番ですよね。

第一楽章の「葬送行進曲」は、タイトルから受ける印象とはほど遠い、温和な死のイマージュに毎回、耽溺しています。

Gil Scott-Heron

まだ若かりし頃、クラブで聴いて「この人誰だろう?かっこいいな」と思って、探求していったらこのアルバム『FARE WILL』にたどり着きました。

パーカッションとフルートのシンプルな演奏をバックに詩を朗読。

メッセージ性の強い詞以上に、サウンドの骨太さが好きなんです。

いまさらながらですが、やっぱりオススメ、ギル・スコット=ヘロンさん(Gil Scott-Heron)。