WATER IN THE DARK

台風が接近している。そんなとき私の脳裏に蘇るのは「夜のプール」である。高校3年生の夏休みの夜、誰もいないプールに気のおけない友人たちと忍び込んだ。暗闇の中、文字通り素っ裸で真っ暗な水面につぎつぎと身を投げていった。先に飛び込んでいった友人の歓声がいつもと違うことをすぐに察した。「きっと面白い体験に違いない」そう直感した私も間髪をいれずに彼らの後に続いた。歓声の意味は言葉にできないほど豊かなものだった。丸出しになった陰茎と睾丸が重力から解き放たれ、冷たいプールとの温度差がこのうえなく心地よかった。それは、まだ何も知らない若者にとって未開拓の、エロチックの沃野だった。
今でも、台風が近づいてくると、その真只中に飛び出して頭からびしょぬれになりたいという衝動にかられる。ちょうど、映画『台風クラブ』(相米慎二監督)で女子高生たちが台風の中、飛んだり跳ねたりしている映像に示されるのと同じ感覚だ。
「夜のプール」の日、台風が来ているわけではなかった。しかし、そこには『台風クラブ』の女子高生たちと同じ青春群像が横たわっていた、と確信している。


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